滋賀県租税教育推進連絡協議会賞

税について

学校法人聖パウロ学園 光泉高等学校 1年 谷内直人

税制の歴史をひもといてみると、欧州の国家の多くでは「国家は君主のものではなく市民によって担われるべきである」という考えのもと税制度が生まれ、米国では所得税は市民の運動から生まれたということが分かる。中世の都市国家や小規模国家群から発展を遂げた欧州や、その欧州からの移民が多く住む米国ではは税金は市民が互いの生活を助け合うために支払うものであり、その管理を政府に任せているといった考えが根底にある。

対して日本における税制度の運用は「租・庸・調」制度にまでさかのぼる。この制度は統治機構が整備され、かつ秦王朝期から統一貨幣が鋳造され、古くから貨幣制度が機能していた中国の唐王朝の制度を導入したものである。その中国における税制度とは、国家が生活の安全を保障する対価として民衆が国家に払うといった考えを背景に、民衆にとって税とは「負担」であり、「仕方なく支払うもの」であった。その点において欧米の税制度とは根本的に異なる制度ではないだろうか。藤原氏の台頭といった朝廷の乱れから端を発し、租・庸・調制度が崩壊した後も日本における税制度は支配者が変わるたびに制度や名称を変えつつ民衆に対する「負担」として存在し続けた。外圧から開国を断行し、明治維新の際に日本は欧米の税制度を導入したが民衆にとっては江戸時代の年貢やそれ以前の税となんら変わらない「仕方なく支払うもの」であることに変わりはなかった。これが今日世界で最も増税が難しいと言われている日本の税制度における根本的な問題であるとぼくは考えている。

日本の税制の問題点は経済規模に対しての税収が極端に少なく、消費税率に至っては先進国の中でも極めて低い5%である。急速に高齢社会が形成され、さらなる社会保障費の増額が求められる中でなぜ増税が難しいのか。これは日本における税制度が「仕方なく支払うもの」であったことに起因しているのではないだろうか。市民が進んで税制度を提案した歴史を持ち、国民主権の考えが広く浸透している欧米諸国に対し、日本では天皇や支配層に主権があるといった考えが強く、税とは支配層が民衆に課す「負担」であり、民衆が国家の一員として必要な財源を担い、国家を創るといった感覚がついに生まれなかったのである。日本は開国以来凄まじい発展を続けてきたために税収も自然と増え、増税が議論されていることはなかった。しかし高齢社会になり、かつ国家の成熟期に入った現代では増税という選択は不可避ではないだろうか。ここに至ってぼくたちは「民衆」から国家に一員である「市民」へと変革し、税とは負担ではなく、必要な財源を国民担うといった思想の転換に迫られているとぼくは考えている。

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