大阪国税局長賞
人に寄りそう税金
米原市立伊吹山中学校 3年 膽吹 春太
今年の七月私の住む地域で大規模な土砂災害が起きた。今朝自転車で登校してきた通学路は、大量の土砂に塞がれた。先生からその事を聞かされ、言葉を失った。
家は警戒レベル5に相当する「緊急安全確保」の避難指定がされ、戻ることができなくなった。避難先で見たテレビには通学路が映し出され、見慣れた景色の変わり果てた姿に呆然とした。数日後避難指示が解除され、私は帰宅することができた。地域の様子は様変わりしていた。
高く土のうが積み上げられ、道は土に覆われていた。用水路には大量の泥が溜まり機能していなかった。安全とは言い切れない状態に不安はつのった。だが、住み慣れた家に戻れた事は嬉しかった。暫くすると、普段は静かな山村に、重機や作業をする方が訪れるようになり、休日には消防署や役場の人達が作業を共にしてくれた。日を追うたびに少しずつだが、復旧作業が進んでいった。
「復興支援」テレビで聞いた事がある言葉だ。それには税が使われている。社会で習った知識だ。重機の手配、被災ゴミの廃棄、中学生の私でも復興作業には多額の資金が必要だと肌で感じた。その財源は税金だ。税金といえば、一番身近である消費税で払うだけのものと思いがちだがそうでは無い。
一九四六年に公布された日本国憲法の中には三つだけ義務がある。教育、勤労、そして納税だ。私達が納めた税金は、安全を守る警察・消防や、道路・水道の整備といった「皆の為に役立つ活動」年金・医療・福祉・教育等の「社会での助け合い活動」に使われているそうだ。そして、災害の復興支援にも使われている。
避難場所の斡旋を、夜遅くまでしてくださった市役所の方。土砂を撤去する為に暑い中作業をしてくださる方。自転車の代わりに私を通学させてくれるバスの運転手さん。そして私を支えて下さった先生方。全ては税のおかげで成り立つサービスだ。私達が払う税が形を変え、心を持って届いている。血税という言葉があるが、まさにこれなのだと思う。今回の様に個人の力ではどうしようも無い事が起きた時、それを助けてくれるのが税金だと思う。税を払う事、税が使われていること。それらは全て私達の生活に自然と寄り添っているのだ。
私達が迎える未来は、年々増加する災害や少子高齢化等で決して明るいものではない。私のようにテレビで見た出来事の当事者になる人も少なくないかもしれない。ただ、憲法に定められた教育の義務のお陰で私は学びを得ている。その財源は税金だ。それを片手に誰も迎えた事の無い未来を、よく考えられる人になりたい。そして、私もいつか成人し、この恩を税という形で返し、自分なりの形で社会貢献できる大人になりたいと思う。